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誤訳の「等式」と方程式 Gleichungの独和辞書
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Gleichung(方程式)の翻訳問題 2023.05.28
日本の科学文化を映す病根ーマルクス学の歪んだ”実像”
1. 方程式と等式の差異について
2. 『資本論』翻訳業界の”悪弊学問” ー誰も責任を取らない科学と無縁時代ー
3. なぜ、等式でなく「方程式」でなければならないのか?
4. 社会科学ー翻訳文化の貧困と科学思考と無縁の欠如性
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『資本論』翻訳問題
方程式Gleichungの独和辞書
→『資本論』第1章第1節
→ D.『資本論』第1章
ドイツ語 Gleichung 和訳ー方程式 について
誤訳の始まりは、Gleichung-方程式から
ー常識的な翻訳語「方程式」が、なぜ通用しない?
ー『資本論』の日本語に科学は必要ない?
ーマルクス学の”権威主義”ー臆病な翻訳家と”自発的服従”たち
[キーワード 目次]
1. 牧野紀之『対訳初版資本論第1章』誤訳の解説
牧野による注記と誤訳の証明ー論点2-1
「 注(15)「Gleichung は方程式であり、Gleichheit が等式であるが、ここに出ている式は方程式ではなく、等式だから、等式と訳した。」
2. Gleichungー主な独和辞書・辞典 訳は全て「方程式」ー論点1
3. 主な『資本論』翻訳者一覧
4. 翻訳者ー「方程式」向坂逸郎、内田 弘 「等式」岡崎次郎 ー論点2-3
→内田 弘 『資本論』の方程式 抄録と編集部コメント
・・・・・・・2023.06.21・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Ⅰ 論点1
Gleichung グライヒュング ー常識的な翻訳語「方程式」が、なぜ通用しない?
■Gleichungー主な独和辞書・辞典 訳は全て「方程式」。
他の訳語に、平等(同等)化, 均等化 など。
■方程式ー主な「和独辞書」の 訳は全て「Gleichung」
■用例
ー 価値方程式 「Wertgleichung」(↓『資本論』本文から検索方法)
①「価値方程式」を検索 (「Ctrl+F」で価値方程式を検索)
②「Wertgleichung」(「Ctrl+F」でWertgleichung を検索)
ー 化学方程式「 chemische Gleichung 」(独和辞書より)
ー 一次方程式「 einfache Gleichung 」 (独和辞書より)
■参照辞書・辞典類―― すべて「Gleichung:方程式」
1. クラウン独和辞典 新田春夫編 三省堂1991年初版
2. 独和大辞典 国松孝二他編 小学館1985年初版
3. 大独和辞典 相良守峯編 博友社1958年初版
4. 独和辞典 小牧健夫他著 岩波書店1958年初版
5. 独英和活用大辞典 河辺実編著 廣川書店1983年初版
Ⅱ 論点2 誤訳の「等式」
主な『資本論』の翻訳書.
岡崎次郎訳ー1970年代から誤訳「等式」時代が始まる
■戦前『資本論』第1巻全訳版 改造社 高畠素之訳 Gleichungの訳語
昭和2(1926)年10月3日発行 *方程式
■『資本論』第2版 Gleichungの戦後翻訳史ー和訳本の *方程式と等式
1. 青木書店(青木文庫)長谷部文雄訳1957年 *方程式
2. 岩波書店 向坂逸郎訳1967年 *方程式
3. 河出書房新社 長谷部文雄訳1969年 *方程式
4. 大月書店 岡崎次郎訳1973年 *等式
5. 中央公論社 鈴木鴻一郎ほか1973年 *等式
6. 新日本出版社 翻訳委員会1982年 *等式
7. 筑摩書房 今村仁司ほか2005年 *等式
8. 日経BP社 中山元訳2011年 *等式
9. 新日本出版社 日本共産党社会科学研究所訳2019年 *等式
*日本共産党翻訳本の最新号版
■『資本論』初版
1. 1973年,74年にGleichungを「等式」と翻訳する『資本論』が刊行され、以後の 翻訳本はすべて、「等式」で統一されている。
2. 『対訳初版資本論第1章』牧野紀之訳 鶏鳴出版1974年発行 *等式
*牧野訳に”Gleichungー等式”と訳した解説があり、
日本語訳「等式」とした、最初の貴重な歴史的”証言”
3. 大月書店 岡崎次郎訳1976年 *等式
Ⅲ 論点3 「方程式と等式の差異」
■数学用語:代数式、方程式、等式の語義
1. 代数式
【精選版日本国語大辞典】「代数式」の意味・読み・例文・類語。
〘名〙有限個の数と文字を、+ - × ÷ n√ の五種の記号によって結合して得られる式。
2. 方程式
【広辞苑】
〔数〕(英語equation)未知数を含み、その未知数に特定の数値を与えた時にだけ成立する等式。この特定の値を方程式の解といい、これを求めることを方程式を解くという。未知数の代りに未知関数を含む場合には関数方程式という。
【デジタル大辞泉-小学館】
1 未知数を含み、その未知数が特定の値をとるときだけに成立する等式。この特定の値を解または根という。
*参考資料:「等式」用語は、近現代数学史の”現代用語”です。
1.『数学用語と記号 ものがたり』片野善一郎著 裳華房 発行2003年
「まえがき」より
方程式の未知数にはx を多く使いますが、どうしてなのでしょうか.
多分,数学の先生でもわからない人が多いと思います。・・・数学用語や
記号の由来を尋ねることは文化としての数学を理解する第一歩なのです.・・・
2.【天才数学者はこう解いた、こう生きた 方程式四千年の歴史】(講談社学術文庫)
方程式ー歴史専門書 *「等式」とは別の源流を訪ねてー
3. 等式
【広辞苑】
〔数〕二つの式または数を等号を以て結びつけたもの。恒等式と方程式の別がある。
例えば、(a+b)2=a2+2ab+b2(恒等式)、3x+2=7(方程式)。
【デジタル大辞泉-小学館】 「等式」の意味・読み・例文・類語
二つの式または数を等号〔=〕で結んだもの。〔単純に「=」で表示する〕
【ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典】
「等式」の意味・わかりやすい解説 equation; equality
二つの数または式,あるいは数学的対象a,b があるとき,これらが等しいことを示すために記号=(等号という)が用いられる。すなわちa=b はa
とb が等しいということを示している。この等しいという関係には,
(1) a=a (反射律)
(2) a=b ならば b=a (対称律)
(3) a=b かつ b=c ならば a=c (推移律)
という性質がある。等式とは,数や式が等号で結ばれている数学的表現のことである。
等式には,恒等式と方程式がある。
恒等式は,(a-b)2=a2-2ab+b2 のようなもので文字に値を代入することと無関係に,式の変形規則に従って証明される等式である。
方程式は,3x-5=0 のような式で,文字がある特定の値をとるときに限って成り立つような等式である。
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■■『資本論』の主な翻訳者 <ウィキペディアより>
0. 高畠素之 (たかばたけ もとゆき、1886年1月4日 - 1928年12月23日)は日本の社会思想家、哲学者。資本論の全訳を行い、国家社会主義を唱えた。(42歳没)
「wikiwand」より
「高畠は1920年6月、まず『資本論』第1巻第1分冊を大鐙閣から出版した。・・・結局高畠が『資本論』全3巻を独力で翻訳することになった。そのため第1巻、第3巻、第2巻という順序で刊行され、また出版社の大鐙閣が関東大震災の余波で倒産し、而立社(大鐙閣の番頭だった面家が作った出版社)で第2巻が出版されるなどの変更があった。しかし兎にも角にも、この大鐙閣‐而立社で、1924年(大正13年)7月、日本で初めて『資本論』が完訳された。・・・(大正15年)10月にかけて新潮社から出版された改訳『資本論』全四冊。1927年から翌年にかけて発行された改造社版の『資本論』である。これは戦前の翻訳『資本論』の定本と言われており、全5冊であった。
〔ちなみに、Gleichung を 「方程式」と翻訳している〕
1. 長谷部 文雄(はせべ ふみお、1897年(明治30年)6月29日 - 1979年(昭和54年)6月13日)は、日本の経済学者。 愛媛県出身。京都帝国大学経済学部卒。同志社大学教授、立命館大学教授、龍谷大学教授、77年退職。マルクス主義経済学文献の翻訳を行い「資本論」を完訳した。〔20世紀日本人名事典 「長谷部 文雄」の解説:京大で河上肇の教えを受けマルクス主義者となった。「資本論」の翻訳に専念、・・・25年に全3巻を完訳。精確な翻訳が読者をふやし、・・・その後も訳文を改善、平易化して3種の改訳版を刊行、マルクス経済学の普及に貢献した。〕
2. 向坂 逸郎(さきさか いつろう、1897年(明治30年)2月6日 - 1985年(昭和60年)1月22日)は、日本のマルクス経済学者・社会主義思想家。九州大学教授・社会主義協会代表を歴任。〔
労農派マルクス主義の理論的実践的指導者,左派社会党のブレーン / ブリタニカ百科事典より。 編集部:『マルクス経済学の方法』価値方程式ー参照〕
3. 岡崎 次郎 (おかざき じろう、男性、1904年(明治37年)6月29日 - 1984年(昭和59年)?)は日本のマルクス経済学者、翻訳家。マルクスの大著『資本論』の翻訳で知られる。書きかけの項目.〔九州大学,法政大学教授を歴任.マルクス・エンゲルス全集『資本論』翻訳。『マルクスに凭れて60年 自嘲生涯記』に向坂逸郎との因縁が詳しく叙述されているが、向坂との理論的な”翻訳差異”には全く触れられていな点が興味深い。ー『資本論』翻訳-初版.第2版〕
4. 鈴木 鴻一郎 (すずき こういちろう、1910年(明治43年)5月23日 - 1983年(昭和58年)4月22日)は、日本の経済学者。東京大学名誉教授、元金沢経済大学・帝京大学教授。専攻はマルクス経済学の経済理論。宇野弘蔵の後継者。彼が宇野から継承した宇野経済学は伊藤誠によって引き継がれることになる。山口県山口町出身。〔鈴木による解説ー”なぜ『資本論』の改作に注力するか”ー「『資本論』とはどういう書物か」〕
5. 今村 仁司(いまむら ひとし、1942年2月26日 - 2007年5月5日)は、日本の哲学者。専門は社会思想史・社会哲学。主に1980年代以降、多数の翻訳や著作によって、フランス現代思想を中心に現代思想の諸潮流を日本に紹介した。著書に『暴力のオントロギー』(1982年)、『現代思想の系譜学』(1986年)、『社会性の哲学』(2007年)などがある。〔『資本論』翻訳 /共訳ー筑摩書房2005年発行〕
6. 中山 元(なかやま げん、1949年2月15日[1] - )は、日本の哲学者・翻訳家。
東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。インターネットの哲学サイト「ポリロゴス」を主宰。多くの哲学書を翻訳している.〔カント哲学の翻訳家.『資本論』翻訳 日経BP発行「第6篇労働賃金」抄録〕
7. 牧野 紀之(まきの のりゆき、1939年 - )は、日本の哲学者・ドイツ語学者。
1939年、東京都生まれ。1963年、東京大学文学部哲学科を卒業。旧・東京都立大学大学院へ進み、1970年に卒業。東京都立大学での指導教官は寺沢恒信であった。同期に許萬元がいる。60年安保闘争の中で直面した問題と取り組み、ヘーゲル哲学を介して考える中で、生活を哲学する方法を模索した。(ウィキペディア:この記事には複数の問題があります。項目・書きかけ)〔牧野の訳語「等式」の弁明『対訳初版資本論第1章』ー参照〕
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方程式Gleichungの独和辞書2022.12.20
hm001-08
資本論ワールド 編集部
Ⅱ 論点2-1
主な『資本論』の翻訳書.
岡崎訳ー1970年代から誤訳「等式」時代が始まる
■『資本論』の翻訳「Gleichung」の主な特徴
1. 『資本論』初版,第二版の翻訳(上記翻訳本)で、「Gleichung」に関して注記しているのは、牧野紀之訳だけである。
なお、随所に細かい独自の注記を行なっている「新日本出版社・日本共産党訳書」でも「等式」と翻訳し、「Gleichung」に、弁明の注記がなされていない。
2. 『対訳初版資本論第1章』 牧野紀之訳 鶏鳴出版発行1974年
〔牧野紀之訳(牧野訳1)p.9ー11〕
「交換価値は、さしあたっては、量的な関係 quantitative Verhältnis 〔注1〕として、すなわち、ある種の使用価値が他の種の使用価値と交換される割合 Proportion 〔注2〕として、時間と場所によって始終変化しているある比率 Verhältnis として現われている。したがって、交換価値というものは、なにか偶然的で純粋に相対的なものであるかのように見えるし、かくして、商品の中にあり、商品に内在している交換価値(内在価値)などというものは、まったくの形容矛盾に見えるのである。事態をもう少しくわしく考察してみよう。」
〔注1〕量的な関係 quantitative Verhältnis:ヘーゲル『大論理学』では、「量的比例」と翻訳されている。(『大論理学』岩波書店(上-+2)p.2)
〔注2〕割合 Proportion:独和辞典では、①割合のほかに、比率、釣り合い、均衡 ②〖数〗比例〖ラテン語〗とあり、数学用語としては「比例」となる。
〔(牧野訳2)〕
「ある1個の商品、例えば1クォーターの小麦は、他のいろいろな商品と実にさまざまな割合で交換されている。それにもかかわらず、その小麦の交換価値は、それがx量の靴墨も表現されようと、y量の生糸に表現されようと、またx量の金に表現されようと、不変のままにとどまっているのである。かくしてその[小麦の]交換価値は、その交換価値を表現するこれらのさまざまな様式から区別されうるものであるにちがいない。〔注3〕」
〔注3〕「さまざまな様式から区別されうる」のであるから、文意からして、当然に「等式」ではなく、「方程式」となる。すなわち、等式A=Bの場合は、AとBを「等号」で結びつけることに主眼がある。一方、方程式の場合、この事例のように、1クォーターの小麦=x量の靴墨,
=y量の生糸, =x量の金 は、靴墨でもなく、生糸でもなく、金でもない、さまざまな様式から区別されうる 「第3のものとして、ある共通なもの(=数学的に”未知数”概念)」を表示しているのである。
〔(牧野訳3) 改行と文頭〇数字は編集部による〕
「① さらに、小麦と鉄という2つの商品をとりあげてみよう。
② 両商品の交換比率がどうであろうと、その比率はつねに、ある与えられた量の小麦 がなんらかの量の鉄に等しいという等式(15)Gleichung で表わすことができる。
③ たとえば、1クォーターの小麦=a トンの鉄といった具合である。
④ この等式Gleichung は何を意味しているか。
⑤ それは、同一の価値が2つの異なった物のなかに、つまり1クォーターの小麦のなか と同様に a トンの鉄のなかにも実在しているということ、これである。」
〔注4〕等式 Gleichung :ドイツ語「Gleichung」に対して、牧野訳者は本文の注記を以下のように行なっている。
「 注(15)「Gleichung は方程式であり、Gleichheit が等式であるが、ここに出ている式は方程式ではなく、等式だから、等式と訳した。(p.169)」
牧野によれば、『資本論』の「ここに出ている式」(p.11)では、
「さらに、小麦と鉄という2つの商品をとりあげてみよう。両商品の交換比率がどうであろうと、その比率はつねに、ある与えられた量の小麦がなんらかの量の鉄に等しい、という等式(15)で表わすことができる。たとえば、1クォーターの小麦=a トンの鉄といった具合である。この等式は何を意味しているか。」「⑤ それは、同一の価値が2つの異なった物のなかに〔注5〕、つまり1クォーターの小麦のなかと同様に a トンの鉄のなかにも実在しているということ、これである。」
牧野は、「ここに出ている式〔1クォーターの小麦=a トンの鉄〕は方程式ではなく、等式だから」と解釈しているが、意識的に同一の価値が2つの異なった物のなかに〔注5〕・・・実在している・・・」を避けているのである。
つまり、この<式:1クォーターの小麦=a トンの鉄>には、以下の文章がつづいて、この<式>が「方程式」を意味表示していることが理解される説明となっています。
(牧野訳4)
「⑤ それは、同一の価値が2つの異なった物のなかに〔注5〕、つまり1クォーターの小麦のなかと同様に a トンの鉄のなかにも実在しているということ、これである。」
「かくして、両者は、絶対にそれらのいずれでもないところのある第3のものに等しい。かくして、小麦も鉄も、どちらも、それが交換価値である限りでは、相手に依存することなく、この第3のものへと還元されうるものであるにちがいないのである。」
「商品の交換価値は、どれもみな、ある共通なもの〔数学的に”未知数”概念〕へと還元されうるのであり、その時個々の交換価値は、その共通のものをより多く表わしたり、より少なく著わしたりすることになるのである。」
このように、マルクスは「方程式」の”未知数” (広辞苑:この特定の値を方程式の解という)を概念規定し表示するところの 用語として―― ⑤同一の価値、この第3のもの、ある共通なもの ―― を追記しているのです。
さらに注目すべきは、『資本論』第2版で、慎重を期して、予断されることを避けるために「⑤同一の価値」という特定概念である”価値”を削除していることです。
「この第3のものは、また、それ自身としては、前の二つ〔小麦と鉄〕のもののいずれでもない。両者のおのおのは、交換価値であるかぎり、こうして、この第3のものに整約しうるのでなければならない。」(向坂逸郎訳
岩波文庫p.71)
したがって、(牧野訳3ー4)の文脈から判断されるように、『対訳初版資本論第1章』で、牧野自身が行なった注記ー「注(15)「Gleichung は方程式であり、Gleichheit
が等式であるが、ここに出ている式は方程式ではなく、等式だから、等式と訳した」ことが「誤り」であり、まさにその正反対であるー未知数を含む方程式の ”解” を求める文脈であるーことが明白となっているのです。
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参考資料ー『資本論』の当該ドイツ語原本
(牧野3のドイツ語原本ー文頭〇数字と下線は資本論ワールド編集部による)
「①Nehmen wir ferner zwei Waaren, z. B. Weizen und Eisen.
② Welches immer ihr Austauschverhältniss, es ist stets darstellbar in
einer Gleichung,worin ein
gegebenes Quantum Weizen irgend einem Quantum Eisen gleich-gesetzt wird,
③z. B. 1 Quarter Weizen = a Ztr. Eisen.
④Was besagt diese Gleichung?
⑤Dass derselbe Werth in zwei verschiednen Dingen, in 1 Qrtr. Weizen und ebenfalls in a Ztr.
Eisen existirt.」 〔D.『資本論』初版01〕第2版では、このDass derselbe Werth が削除されています。
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Ⅱ 論点2-2 参考文献
3.『資本論』第1巻初版 岡崎次郎訳 大月書店1976年初版
〔(岡崎訳2)p.22ー23〕
「ある一つの商品、たとえば1クォターの小麦は、きわめてさまざまに違っている割合で他の諸物品と交換される。それにもかかわらず、この小麦の交換価値は、x量の靴墨で表現されようと、y量の絹とかz量の金などで表現されようと、不変のままである。だから、この交換価値は、それのこのようないろいろな表現様式からは区別されうるものでなければならないのである。」
〔(岡崎訳3)改行と文頭〇数字は編集部による〕
「① さらに、二つの商品、たとえば小麦と鉄とをとってみよう。
② それらの交換関係がどうであろうと、この関係は、つねに、ある与えられた量の小 麦がどれだけかの量の鉄に等置される、という一つの等式 で表わすことができる。
③ たとえば、1クォーターの小麦=a ツェントネナーの鉄というように。
④ この等式はなにを意味しているであろうか?
⑤ 同じ価値が二つの違った物のなかに、すなわち1クォーターの小麦のなかにも
aツェントナーの鉄のなかにも、存在している、ということである。」
*なお、岡崎訳『資本論』初版は1976年で、牧野訳が1974年。
Gleichungの訳語「等式」の牧野解説に対して、岡崎は”無言”で対応している。
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◆資本論ワールド編集部より
『資本論』翻訳問題のキーワードから「Gleichung:方程式」を探究しています。
戦後日本の『資本論』翻訳家たちは、1970年代を境に戦前からの「方程式」を「等式」へと路線転換を押し進めてきました。これは、岩波書店-1969年に文庫版『資本論』の発行が”きっかけ”となりました。高畠素之、長谷部文雄、向坂逸郎へと戦前・戦後の伝統的『資本論』の「方程式」解釈を改変する事態へと発展してゆきます。
岩波書店とマルクス・エンゲルス全集・大月書店との業界を二分する『資本論』翻訳問題であり、これを契機に多種多様な改変版『資本論』の出現です。その先頭に立ったのが、岡崎次郎訳の「価値等式Wertgleichung」概念の出現だったのです。当時の世間一般の受け止めは、特殊翻訳専門家以外では問題視されず、『資本論』出版業界の勢力争いに終始していました。翻訳用語をめぐっての論争もほとんど注目されず、わずかに牧野紀之訳『対訳初版資本論第1章』(1974年)の「注」(15)で「方程式と等式の差異」が指摘されるに止まっていました。
その後半世紀が経過し、『資本論』風景は一変しました。日本の翻訳『資本論』「価値方程式」の科学用語の余命は、戦後75年ー半世紀という、あまりにも”短い人生”で終止符が打たれています。日本的立ち位置の科学的象徴です。
2000年超の歴史を有する西洋科学史の”原子論”世界では、20世紀「周期律・周期表」から21世紀「ヒッグス粒子」の発見へと新たな発展を遂げています。日本語「Wertgleichung・方程式」の復活は、日本の科学言語の新たな誕生となることでしょう。
・・・・・・・2023.07.20・・・・・・・
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Ⅱ 論点2-3
→『資本論』第2版 向坂ー岡崎 翻訳/誤訳のキーワード
資本論ワールド編集部 論点整理
今日の数学では一般的に、「方程式」とは数式に用いられている数量の関係-問題群のなかで、解かれるべき文脈において、”未知数”となる「ある値」を代入した場合に成立する数式を言います。方程式が成立するとき、方程式の”解”をもとめることを「方程式を解く」といい、連立方程式の形式が多くなります。
また、等号「=」が用いられている事象において、「等しい」数量関係が表示される場合に、「等式」と言います。「等式」の場合、その内容は問わずに、関与することなく「等号=」で結合されるところに、主眼が置かれます。
『資本論』第1巻 第2版
①向坂逸郎訳
②岡崎次郎訳
③内田弘による「方程式」の解説と資本論ワールドのコメント(作業中)
① 向坂訳 方程式
「さらにわれわれは二つの商品、例えば小麦と鉄をとろう。その交換価値がどうであれ、 この関係〔Austauschverhältnis:交換関係〕はつねに〔*注1〕一つの 方程式Gleichung に表わすことができる。 〔*注2〕そこでは与えられた小麦量は、なんらかの量の鉄に等置される。 例えば、1クォーター小麦=aツェントネル鉄というふうに。
〔*注3〕この方程式は何を物語るか?
二つのことなった物に、すなわち、1クォーター小麦にも、同様にaツェントネル鉄にも、〔*注4①〕同一大いさのある共通なものがあるということである。したがって、〔注4②〕両つのものは一つの第三のものに等しい。〔注4③〕この第三のものは、また、それ自身としては、前の二つのもののいずれでもない。〔注4⑤〕両者のおのおのは、交換価値である限り、こうして、この第三のものに整約しうる〔〖数学〗換算する,約分する〕のでなければならない。」(岩波文庫p.71)
② 岡崎訳 等式
「さらに、二つの商品、たとえば小麦と鉄とをとってみょう。それらの交換関係がどうであろうと、この関係は、つねに、〔*注5〕与えられた量の小麦がどれだけかの量の鉄に等置されるという一つの等式で表わすことができる。たとえば 1クォーターの小麦= aツェントナーの鉄 というように。
〔*注6〕この等式はなにを意味しているのか?
〔注7①〕同じ大きさの一つの共通物が、二つの違った物のうちに、すなわち1クォーターの小麦のなかにもaツェントナーの鉄のなかにも、存在するということである。だから、両方とも或る一つの第三のものに等しいのであるが、この第三のものは、それ自体としては、その一方でもなければ他方でもないのである。だから、それらのうちのどちらも、それが交換価値であるかぎり、この第三のものに還元できる〔〖数学〗換算する,約分する〕ものでなければならないのである。」 (大月書店国民文庫p.75)
③ 内田 弘『資本論』の方程式 論文 専修大学名誉教授.
Economic Bulletin of Senshu University Vol. 55, No. 1, 19-40, 2020
2020年、専修大学経済学紀要に掲載された内田氏の「 『資本論』の方程式 」で、「等式」と翻訳された誤訳を厳しく批判され、”なぜ方程式でなければならないか”詳しい解説を行なっています。これに対する「反論、批判」論文が、関係方面からは出版されていません。(編集部の見落としがあれば、ご連絡をお願いします。)
*資本論ワールド編集部
内田弘論文 『資本論』の方程式 抄録と編集部コメントはこちら (作業中)
なお、編集部では、「翻訳問題」への研究として、以下の語学・文法資料を用意しています。さらに調査・研究を目指すための学術編です。
④ 交換価値の数学的表現方式 ー誤訳の源流を探るー
→表現方式Ausdrucksweiseと数式の仕方
ー方程式の分析を通じて価値を導き出すー
⑤ 『資本論』第2版「方程式」ドイツ語当該原本
「さらにわれわれは二つの商品、例えば小麦と鉄をとろう。その交換価値がどうであれ、 この関係〔Austauschverhältnis:交換関係〕はつねに一つの 方程式Gleichung に表わすことができる。そこでは与えられた小麦量は、なんらかの量の鉄に等置される。例えば、1クォーター小麦=aツェントネル鉄というふうに。」
「この方程式は何を物語るか?
二つのことなった物に、すなわち、1クォーター小麦にも、同様にaツェントネル鉄にも、同一大いさのある共通なものがあるということである。したがって、両つのものは一つの第三のものに等しい。この第三のものは、また、それ自身としては、前の二つのもののいずれでもない。両者のおのおのは、交換価値である限り、こうして、この第三のものに整約しうる〔reduzierbar sein 換算する,約分する〕のでなければならない。」
Nehmen wir ferner zwei Waren, z.B. Weizen und Eisen. Welches immer ihr
Austauschverhältnis, es ist stets darstellbar in einer Gleichung, worin ein gegebenes Quantum Weizen irgendeinem Quantum Eisen gleichgesetzt
wird, z.B. 1 Quarter Weizen = a Ztr. Eisen.
Was besagt diese Gleichung? daß ein Gemeinsames von derselben Größe in zwei verschiednen Dingen existiert,
in 1 Quarter Weizen und ebenfalls in a Ztr. Eisen. Beide sind also gleich einem Dritten〔第三のもの〕, das an und für sich weder das eine noch das andere ist. Jedes
der beiden, soweit es Tauschwert, muß also auf dies Dritte reduzierbar sein.
*『資本論』第1版の「同一の価値 ⑤Dass derselbe Werth 」が削除されています。
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