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『資本論』の方程式 sj002-01
  資本論用語事典2021

『資本論』方程式

 『資本論』の交換価値と方程式について―

 方程式と価値方程式 ー「価値等式」は誤り
   

Ⅰ  方程式の説明
 
 岩波『資本論』本文箇所は、①~⑤で表わし、「 , 」は、報告者(私)の説明文

「一定の商品、1クォーターの小麦は、例えば、x量靴墨、またはy量絹、またはz量金等々と、簡単にいえば他の商品と、きわめて雑多な割合で交換される。このようにして、小麦は、唯一の交換価値のかわりに多様な交換価値をもっている。(岩波文庫p.70)

   1クォーター小麦 =x量靴墨=y量絹=z量金
     小麦は多様な交換価値をもつ。

「しかしながら、x量靴墨、同じくy量絹、z量金等々は、1クォーター小麦の交換価値であるのであるから、x量靴墨、y量絹、z量金等々は、相互に置き換えることのできる交換価値、あるいは相互に等しい大いさの交換価値であるに相違ない。

  1クォーター小麦の連立方程式を意味内容
    1クォーター小麦 =x量靴墨、
    1クォーター小麦=y量絹、
    1クォーター小麦=z量金
  すなわち
    x 量靴墨 = y 量絹 = z 量金
   靴墨、絹、金は相互に等しいある「大きさの交換価値」を表示している。


「したがって、第一に、同一商品の妥当なる(諸)交換価値は、一つの同一物を言い表している。
   これらの(諸)交換価値は、一つの同一物、つまり〔連立方程式の共通な, ある“未知数”概念〕を表している。


 だが、第二に、交換価値はそもそもただそれと区別さるべき内在物の表現方式、すなわち、その「現象形態/形式(数式で表示される形式)」でありうるにすぎない。

   交換価値は、互いに異なる商品種が交換される時に、現象してくる
   交換価値は、A商品=B商品の左右の項(A 商品種とB 商品種)の違う形式としてしか現象しない。(→ 貨幣形態・価格へ)

 さらにわれわれは二つの商品、例えば小麦と鉄をとろう。その交換価値がどうであれ、この関係はつねに一つの方程式〔Gleichung〕に表わすことができる。
 そこでは与えられた小麦量は、なんらかの量の鉄に等置される。例えば、1クォーター小麦=aツェントネル鉄というふうに。

   例えば小麦と鉄」という場合、①のx量靴墨、またはy量絹、またはz量金等々に表示されている諸商品種の中から代表して取り出されているのである。
    「例えば、1クォーター小麦=aツェントネル鉄」、
     「例えば、1クォーター小麦=x量靴墨」    
     「例えば、y量絹、=z量金」 の具合に表示されることになる。

   この「例えば、」は、結局「連立方程式」を表示しているのである。

  この「連立方程式」は何を物語るか?

      ●コラム3商品の価値表現と価値方程式の抄録 参照

 〔ドイツ語では方程式:Gleichung、(等式:Gleichheit)、英語では両方とも:equation〕
  岩波・向坂訳、河出書房新社・長谷部訳以外は、この方程式:Gleichungを
   「等式Gleichheit」と読み換えてわざわざ日本語に翻訳し、変更している

  このようにして、「改訳 (改悪) 」し『資本論』の「論理学」を破壊しているのである。


Ⅱ 『資本論』の翻訳問題

 (1)ヘーゲル弁証法 
   「個別的なものは、一般的なものへ通じる連関のうちにのみ存在する。」
 ヘーゲル弁証法の難関の第一は、「 対立しあっているもの(個別的なものは一般的なものに対立している)は同一である。個別的なものは、一般的なものへ通じる連関のうちにのみ存在する。一般的なものは、個別的なもののうちにのみ、個別的なものによってのみ存在する。」(レーニン『哲学ノート下.p198-200)という論理構造の具体的な理解にあります。

 (2)「方程式」成立の前提条件
 個別的な 1クォーター小麦と a ツェントネル鉄が「=」で連結されるのは、一般的なものへ通じる連関(この表示機能を方程式という)にたいしてである。
     
 すなわち「等式」が意味表示している事柄は、異種同士の「もの・概念」をつなぎ合わせ「連結」させる機能自体を表示する場合(意味内容は別次元の問題となる)に使用する。
 したがって、③の「一つの同一物〔数学上では、方程式の解法としての “未知数概念” を意味している〕を言い表している」機能を表示する場合には、「方程式」を使用し、「等式」は使用しない。
 以上
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